連日、新型コロナ感染症がビジネスに与える影響が報じられる中、新しい生活様式である「ニューノーマル」という言葉がよく聞かれる様になりました。多くの企業が導入し始めたテレワークは、「ニューノーマル」の一つの要素になりつつあります。

コロナ禍以前のテレワークへの誤解とは?

テレワークの普及と、それが社会に与える影響を考えるにあたり、参考資料として調査会社である「Owl Labs」が新型コロナウイルス感染拡大以前に発表した『State of Remote Work Report for 2019(リモートワークの現状レポート2019年度)』を見てみましょう。

この調査から、コロナ禍よりも以前にテレワークがどの程度普及していたのか、なぜ企業はテレワークの導入をためらっていたのか、また、そのような企業はテレワークに対しどのような誤解を抱いていたのかが明らかになります。

State of Remote Work Report for 2019』ハイライト

  • 38%は、オフィス勤務のみ。
  • 62%は、頻度は異なるものの何らかの形でテレワークに携わっている。
  • 30%は、フルタイムでテレワークを行っている。

【テレワークをしている部下を持つ上司】

  • 約82%は、部下の生産性/エンゲージメントの低下を最大の懸念として挙げている。
  • 約81%は、部下のエンゲージメントと満足度低下を懸念している。

【テレワークしている従業員】

  • 79%は、テレワークによって生産性/集中力が高まったと回答している。
  • 91%はワーク/ライフバランスが改善したと回答している。

【オフィス勤務者との比較】

  • 週あたり40時間以上働いていると答えた数
    テレワーク従業員の比率は、オフィス勤務者を43%上回った。
  • 現在の仕事に満足していると答えた数
    テレワーク従業員の比率はオフィス勤務者を29%上回った。
  • 34%の米国の従業員は、テレワークに移行できるなら給料の5%カットを受け入れると回答した。

生産性やエンゲージメントの低下、退職が牽引されることを懸念しテレワークの導入をためらっていた企業や部署も、近い将来導入に踏み切らざるを得なくなっています。急遽強制的に始まった一斉テレワークの現状 と上記の調査結果を踏まえると、フルタイムとパートタイム両方のテレワークが拡大すると考えられます。

テレワークの効果

テレワークには以下のような直接的効果も伴います。

  • テレワークによって不動産とITへの投資を大きく削減
    テレワークを導入する企業はより少数のオフィスしか必要とせず、また現状のオフィスもより狭いもので十分です。また事業継続が重要になり、企業がクラウドへの移行を進めることで、ビジネスモデルもCAPEX(設備投資)主体からOPEX(事業運営費)主体へと変化します。
  • 事業継続(BCP)において極めて大きな役割
    テレワークを導入した企業は、いずれやってくる気候変動、パンデミック、地政学的事象などに耐え、同時に生産性の低下を最小限に抑えることができるはずです。今回の新型感染拡大に伴い、Citrixもオフィスを閉鎖し従業員の働き方は変化しましたが、テクノロジーの切り替えが必要になることはなく、生産性への影響もほとんどありません。Citrixにおいて変わったものは、従業員が働く場所とCitrix Workspaceへの接続に使用するデバイスだけです。

企業の競争力に貢献するテレワークとは?

戦略的なテレワークの利点は、企業に競争力をもたらします。生産性向上やコスト節約、事業継続などを理由として、今後も企業がフルタイムのテレワークを標準的なビジネス慣行として取り入れることが予想されています。

 

コスト削減の一例は、テレワークによって実現するBYOD戦略です。BYODはハードウェア、通信、およびサポートとトレーニングの3つの分野で費用削減に貢献する可能性があります。Cisco社のInternet Business Solutions Groupによれば、BYOD導入により企業が節約可能な金額は従業員1名あたり年間3,150ドルと推定されています。これにはデバイス本体の費用、データ接続プラン、および従業員1名あたり年間1,518ドル相当の時間節約が含まれています。

BYODはコスト削減だけでなく、生産性にも貢献するといわれています。モバイルワーカー間のコラボレーションを通じ、1日あたり1時間相当の生産性向上、あるいは生産性の17%向上をもたらすと推定されています。

HTML-5ベースのリモートデスクトップ・アクセスソリューションを利用することで、専用クライアントソフトの導入や管理を省けるため、BYODのコスト削減をより享受できます。

注:Citrix Virtual Apps and DesktopsはHTML-5ベースのリモートデスクトップソリューションです。

出典:https://dzone.com/articles/how-much-does-byod-really-save-your-company

また、テレワークにより企業には地域を限定しない人材採用が可能になります。人材プールをさらに広範な地域に拡大できるようになり、地域の人材のみに依存したり、あるいは優秀な人材を獲得するため転勤その他の費用を負担したりする必要はなくなります。また生活コストの安い地域に住む人材を採用することによる人件費節約の可能性もあります。

テレワークには企業の収益性に影響する環境面でのメリットも存在します。SDGsに取り組む企業が増える中、環境に関心の高い方は、このパンデミックにより大気汚染が減少していることはご存知と思います。テレワークを導入した企業は、テレワークを通じた環境貢献度について示すことが可能です。

Global Workforce Analyticsによれば、人々が週の半分だけテレワークとした場合、温室効果ガス排出削減効果が年間5,400万トンに達すると推定されています。また、ピーク通勤時の交通量を減らすだけでなく、交通インフラの損傷と程度も軽減します。

テレワークの従業員が増えれば、プリンタで使用する紙からオフィスのサイズ、およびそこで使用されるエネルギーまで、あらゆるものが削減されます。そして、電力消費、オフィススペース、輸送コスト、および通勤費の会社負担分にも大きなコスト削減がもたらされます。

出典:https://www.greenchildmagazine.com/environmental-benefits-of-remote-work/

現在のZ世代と言われる若い人材は、給与額よりも企業の倫理面を重視します。環境への関心も高く、環境に責任を持つ企業なら給与の低さも受け入れるケースも見られています。

出典:https://www.fastcompany.com/90306556/most-millennials-would-take-a-pay-cut-to-work-at-a-sustainable-company

待ったなしに始まった一斉テレワークを一時的なものとしてではなく、企業の長期的戦略として捉えることで、今後の競争力に繋がることは明確ではないでしょうか。